『後継者について(まじめに)考える』の巻き | |
師範 藤本 恵祐 |
2006年11月05日 |
私が藤沢で道場を始めて11年になります。「もう11年」と言うべきか「まだ11年」と言うべきか・・・。その間たくさんの方々が入会し、ある方は去り、ある方は今も熱心に稽古に打ち込み、そしてまた新しい方が門を叩き・・・。私にとって道場運営の一番の楽しみは、色んな方々と空手を通じて出会えることです。そして、会員の皆さんひとり一人が道場の主役であり、財産だと思っています。 最近政治の世界では、あのライオンヘアーの小泉さんから安倍さんへ首相が交代しました。最初から小泉さんの意中の候補であったかどうかは別として、安部さんが後継者として政界のリーダーに立ったわけです。その模様をニュースで眺めながら、ふと「僕もいつまで道場の師範としてやっていけるのだろうか(いくべきだろうか)・・・」との想いがよぎりました。首相と一道場の師範では社会的責任や影響度は比較になりませんが、私も未来永劫師範であり続けることは出来ません。 理由はいくつかありますが、先ずは体力、気力の問題です。足腰が利かなくなってしまっては指導することが難しくなります。いつかはそのような時期が好むと好まざるとにかかわらずやってくる訳です。 次に、永らく特定の人間が師範を務め続けた場合、技法が統一され、指導体系も整備されるというメリットもありますが、稽古方法や道場運営がマンネリ化し、時代の新しい息吹を受け入れにくくなる、というデメリットも出で来ると思っています。 そのタイミングは道場全体の状況を見据えて判断しなくてはいけないのですが、私は今がその時だ、と思ったら躊躇せず師範を辞するつもりです。そして、それからは一個人の修行者として稽古を続けて行きたいと願っています。そのためにも、今回の本題である『後継者』の問題が重要になるわけです。 私を含め湘南藤沢道場の指導者の皆さんは(東京本部の他の道場も同じ)、正業を他に持ちつつ空手は事情の許す範囲でボランティア指導しいるわけですが、師範を務めるということは、(あるいは師範とともに指導者として活動することは)実はなかなか大変です。冒頭のような、人との素晴らしい出会いを味わいながらも、プライベートな部分では相応の時間的、肉体的、精神的犠牲を伴うことも事実です。 皆さん自身は今ひたむきに稽古をしている段階で、よもや自分が師範に(あるいは指導者に)なるなんて想像もしていないことと思いますが、長い歴史の中で苦労して沖縄空手を生み、育ててきた先達の志を想うとき、道場を閉鎖してしまうことは、今の私の選択肢にはありません。 つまり、私の引退後も道場はずっとずっと続いて欲しいので、今から師範(あるいは師範とともに手を携えて歩んで頂ける指導者)の『後継者』を育てて行く必要があると痛切に感じているのです。 十数年前、先代の山田師範から当時の八王子柚木道場を任せられたときは、「自分がお世話になった道場が無くなるのはいやだ」、という思いだけで手探りでその運営に当たり、何とか今日まで修行を続け、皆さんと一緒に稽古することが出来ていますが、最初は不安で不安で仕方がありませんでした。しかし、これも何かの縁と思い、ある意味開き直ってコツコツ出来る範囲の努力をしてきたのも事実です。そこには一切の後悔はなく、逆に自分の人生を豊かにしてもらった、という感謝の気持ちで一杯です。
つらつら書きましたが、どうぞ、『志(こころざし)ある方、私の(我々指導者の)後継者として是非名乗りをあげてください』。もちろん、新生茅ヶ崎道場も同じくです。素晴らしい後継者に、笑顔で道場をバトンタッチできる日を楽しみに、これからも皆さんと楽しく稽古に打ち込んで行きたいと願っています。 |