『比(較)べること、についてちょいと考えるの巻・・・』
師範  藤本 恵祐

 2006年12月16日

  私は仕事柄飛行機や新幹線で出張することが多く、機内や車中でよく週刊誌を読みます。つい最近、ある俳優さんのエッセーの中にこんな一文を見つけました。「較べることから不幸が始まる、が私の座右の銘です・・・」

 人間は社会生活を営む中で、周囲の方と自分を比べる習慣が自然と身に着いているようです。年齢、成績、身長、収入、地位、美貌(笑)・・・などなど例を挙げたらきりがありませんね。 ある意味、そのこと自体は自分のポジションを推し量り、目標を持つという点で必要なことかも知れません。しかし、いくら比べても「所詮自分は自分」なのだと私は思います。

 武道に例えて言えば、皆さんは道場に入門し一定のレベルに到達したら昇級審査や昇段審査に挑戦することになります。自分と同じ時期に入門したのにあの人はもう○級になった、凄いな〜。それに「比べて」自分は(あるいはうちの子は)・・・なんて一喜一憂したことはありませんか。実は、かく言う私にもそんな経験があります。

 でもちょっと待ってください。確かに先に昇級や昇段を果たした人を目標にして奮起することは大切なことですが、だからと言って自信を無くしたり、思い悩む必要は全くないのです。段位や級位は、他者と自分の優劣を「比べる」ためのものではありません。あくまで自分で自分を心身ともに磨き込み、自身が納得を得る形で次のステップに到達するための道しるべとして設けられた制度に過ぎないと思っています。

 そもそも、ひと昔前まで武道には段位や級位は存在せず、師匠に付いてひたすら鍛錬精進し、納得が行くレベルに到達したかどうかを生涯自問自答し続ける「道」でした。

 何かと他者と比較しがちな現代社会において、周囲の評価に感化影響されず、生涯自分で自分を客観的に見つめ高めてゆく機会を持ちたい・・・。そのひとつに是非空手道の修行を位置づけて欲しいのです。

 私の好きな歌に「ナンバーワンになれなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」というフレーズがあります。

 これからも修行を通じて、お互いに「光輝くすてきなオンリーワン」を目指しましょう!

 <補足>でも、やっぱり私は皆さんに「比べて」お酒だけは強い、と自負しています(笑)