生涯空手

指導員  上地 正昭

 2008年3月24日

 湘南沖空会の皆さん、報告が遅くなりましたが、お陰様で、2月25日に無事長女(真央)が産まれました。早く空手を一緒にやりたい気持ちでいっぱいですが、まだまだ先の話ですね。

 さて、今回は「生涯空手」という大それたテーマで、我々現代人が求めている空手像とは何か?について入門前の初心に戻って、一般人の立場から考えてみたいと思います。

 皆さんは、「なぜ空手をやっているのか?」と尋ねられたら、どのように答えますか?「空手が好きだから!」、「楽しいから!」、それも答えとして成り立つことがあるでしょう。ですが、それはどちらかと言うと空手をやってみた結果論に近いので、空手の何に惹かれたのか?空手に何を求めているのか?そのような問いかけに対するあなたの答えを考えてみるといかがでしょうか?私がおよそ思いつくものをざっと挙げてみると、次のような空手像が我々のモチベーションになっているのではないかと思います。

@強者の象徴としての空手
「強者でありたい」、誰もが本能的に抱く強者願望を実現する代表的手段として、日本で空手は根付いていますよね。強者としての自信は、心の余裕にもつながりますので、「精神的にも自信をつけたい」、「胆力を強くしたい」という目的で空手をはじめる方もいますよね。

Aステータスとしての空手
「黒帯を締めたい」、「空手の有段者になりたい」、「空手をやってますと言いたい」、そういった願望も空手を始めるひとつの動機になっているかと思います。なんとなく肩書きに目を奪われた不純な動機のようにも思えますが、空手の黒帯や有段者となることを強者のステータスとして目標にすることは、至って自然なことですよね。何かの資格を取りたいという動機と同じ感覚の方もいるかもしれませんね。

B護身術としての空手
武力/暴力から自衛するための術として生まれた空手ですが、平和な現代においても子供や女性の為の護身術としてのニーズは健在ですね。男性であっても、いざという時の為の心得として身につけておきたいという動機で始められる方もいますよね。現代では、これを第一の目的として空手を始める方は少ないのかもしれませんが、本来の空手像の本質ですね。

C伝統文化としての空手
古き良き伝統技法を習得し伝えてゆきたい、沖縄空手の場合、特にそのような意義を見出している方も少なくないかと思います。例えば上地流系においては貫手や足先の鍛錬を徹底的に行う道場があるように、現代における必要性や大衆的なニーズとは一線を画したところにある空手像を求める方もいるかと思います。剣術において、竹刀を用いる剣道ではなく、真剣を用いた剣術を学びたいという人の心理に通じるものがあるのかもしれませんね。

D競技としての空手
組手や形の試合で勝ちたい、チャンピオンになりたい等、スポーツの世界では第一に挙げられるモチベーションですね。「他人と比べる事で現在の自分の力量を正しく知りたい」、「真剣勝負で自分の力を試したい」、「明確な目標をもってモチベーションを高めたい」、そのようなニーズに応えるための競技としての側面も、空手には求められるのでしょうね。

E生涯スポーツとしての空手
空手を通じて他者との交流を深め、健康や体力の維持向上とともに、爽快感、達成感、満足感、連帯感など、精神的にも充実する、そのような生涯スポーツとして空手を選ぶ方もいるかと思います。型を追求する人、50歳を過ぎても組手試合にでる人、若手の指導に情熱を傾ける人、いわゆる競技としての現役を退いても、生涯を通じて様々な形での空手との付き合い方がありますよね。

 以上、皆さんが求めている空手像はありましたでしょうか?他にも色々あるかとは思いますが、我々はこのようなニーズをそれぞれに抱いて、自分の空手像に近い道場の門を叩き、現在も空手を続けているわけですよね。

 さて、我々入門者の側がそれぞれの空手像を描いているように、空手道場の側も流派や道場主の理念に基づいた空手像を掲げ、それに則った稽古内容や試合ルールを設けています。競技に力を入れる道場や、試合は行わない道場、投げ技や締め技まで取り入れる道場、子供の教育中心の道場など、それぞれの理念に基づいて色々な特色の空手道場が存在しているのが現状だと思います。

 そのような中で、我々の湘南沖空会はどのような空手像を掲げた道場なのでしょうか?実は、幸いなことに湘南沖空会は、上記の空手像のいずれにも重点を置くことが可能な流派であり、また道場生の皆さんの意見を反映した稽古内容や大会ルールを築き上げてゆける風土のある恵まれた道場なのではないでしょうか。

 「いずれの空手像も追求できるなんて都合が良すぎる、それではどれも中途半端となるのでは?」そのような意見もあるかもしれません。確かに2年や3年の短い年数でみた場合、例えば競技の技術と伝統技法の両者の稽古を行うよりは、競技の技術だけに集中した方が大会等で確実に結果を残せるでしょう。しかしながら、10年や20年のもっと長い年月で生涯をかけて自分の目標とする空手像を描き、それを少しづつ達成してゆくことを考えてみた場合、現在の湘南沖空会のようにバランス良く、且つ柔軟な稽古スタイルで空手と向き合うことの方が最良ではないかと感じています。これは逆に言うと、道場生の皆さん全員が入門者の立場だけでなく、道場側の立場としても理想の空手像を考えてゆく責任があるということなのかもしれませんね。

 自分が何を目的に空手を始めたのか?また、どのように空手と付き合ってゆきたいのか?そんな生涯空手像を改めて自分の中で確認してみてはいかがでしょうか?きっとそれは、自分の目標 を明確とするだけでなく、湘南沖空会をますます素敵な道場に発展させる原動力となるかと思います。

 さて、今回紹介するホームページは、ご存知の方も多いかもしれませんが、3月25日にDVDが発売される映画「黒帯」のサイトです。
http://kuro-obi.cinemacafe.net/
このページの「空手の歴史」のコーナでは、上地流の話もでてきます。予告編を観れば、実際の現役空手家による本物のアクションに目を惹かれます。主人公を演じているのは沖縄空手(剛柔流)の高段者の方ですし、その他のキャストも色々な流派の熟練者達を集めているようです。まだ実際に映画を観たわけではありませんが、このマニアックな映画は一見の価値アリではないでしょうか。
 

 

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