武術修行の功徳

館長  藤本 恵祐

 2016年3月6日


最近道場の子供たちに、「君は一体どうして空手を習っているの?」と積極的に聞くようにしています。それは、彼ら彼女らが空手に向き合う際のモチベーションがとても大切だと思うからです。

 「強くなりたい」「悪い人から自分を守りたい」「お父さんお母さんが勧めた」など、その目的は様々です。

私はそんな子供たちに、修行の目的はどうあれ、武術の修行を続けるとどんないいことがあるか、自分の思うところをしっかりと伝えます。 

まずは、「体と心が強くなる」です。自分を鍛えるのは自分自身にほかならず、熱心に稽古に打ち込めば自然と強固な心身が養われることは、子供たちもちゃんと体感できることでしょう。

 次に、「生涯仲間が増え続ける」です。普通は大人になって社会に出れば、学校はもちろん、家庭や職場などを通じてたくさんの知り合いが出来ますが、会社勤めなどの現役生活を終えると、加齢とともにどんどん仲間が減ってゆくのが普通でしょう。しかし、空手を始めとする武術を生涯現役でこなせば、死ぬまで仲間が増え続けることになります。
しかも、同じ武術を学ぶDNAを持った強い絆の仲間です。
 

最後に、「人間としての信用・信頼を獲得できる」です。これが一番の功徳だと私は思っています。武術は他のスポーツと違って勝敗を競うゲーム性が薄く、ひたすら克己鍛錬の世界を追求するわけであり、地味で派手さは全くありません。しかし、なかなか人が歩まない道であるからこそ、1年、5年、10年、20年、30年とひたすら打ち込んでゆけば、一意専心の生きざまによって必ずや周囲の人たちから厚い信用・信頼を寄せられることは間違いないと確信しています。そして、人からの信用や信頼はいくらお金を積んでも手に入るものではないという点が重要です。 

道場で永年修行を続けるということには、上記のような自分では気づかない功徳がたくさん積まれるということに他なりません。 

私は実質的には27歳くらいから八王子道場を皮切りに空手を指導し、今日まで恐らく1000名を超える方々の入門を受け入れて来ましたが、今現在も修行を続けている方は、他の会派に移籍した方も含め、一桁の人数しか居ません。つまり、仮に10人としても、わずか1%に過ぎない訳です。 

どれだけ、一つの道を歩み続けることが難しいか、その事実を考えるだけで容易に想像して頂けることでしょう。 

会員の皆さんが生涯現役で修行を継続し、目に見えない功徳の果実をたくさん実らせることができるよう願って止みません。

 

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