『熊本地震』

館長  藤本 恵祐

 2016年5月3日

4月14日(木)21時26分に発生した「熊本」地震では震度7の揺れが2回も襲い、以降1000回をゆうに超える余震が続いています。 
私の実家(宇土市)も屋根瓦が落ちたり、庭の甕が割れたりといった被害を被りました。
 
実家の両親が避難所で車中泊をしており、親戚の家が半壊したと聞き、飛行機や新幹線が運休していたことから、私は食料や水を積んで、18日(月)の早朝に車で一路熊本を目指しました。
 
救援のための警察、自衛隊、救急、ガス会社などの車列が連なる高速道路を約18時間、最寄インターから渋滞する一般道を約2時間、計20時間で走破。(片道の走行距離は約1250km)
 
もちろん、他県から一般車が被災地に入ることは、無用な渋滞や事故を引き起こすなど、復旧の妨げになる側面もあると自分ではわかっていたのですが、居ても立ってもおられず、思わずそのような選択をした訳です。

 
そして、たった一晩ですが、底冷えと大きな余震の続くなか車中泊をしてみて、このまま高齢の両親を熊本に置いてはおけないと判断。食料や飲料を親戚に配り、少しだけ仮眠をとって両親を乗せ、今度は一路妹夫婦の住む埼玉県を目指しました。結果は約24時間を要する強行軍でした。 
交通事故を含む二次災害の危険性もゼロではなかったので、私の取った判断行動には批判やご意見があるかも知れませんが、今回思ったことの一つに、「唐手をずっと修行してきたお陰で気力、体力が養われ、何とか無事に戻ることができた」というものです。
 
いままで九州は比較的地震の少ないエリアと皆が思い込んでいましたが、結果はご承知の通り、日本は活断層だらけの狭隘な国土であり、いつ、どこで再び大規模地震が生じるかは「神のみぞ知る」というところでしょう。

 
防災はできないが減災はできる、と言われますが、我々は常に備えを怠らず、地震を始めとするさまざまな天災に恐れず向き合わなければならないと改めて自覚しました。 
さて、皆さんが日々打ち込んでいる唐手ですが、普段の鍛錬修行を通じ、気力・体力・判断力を養い、いざという時に、不撓不屈の精神を発揮し、大切な家族や近隣の皆さんに救援の手を差し伸べるために、おおいに役立つものと考えています。まさに「人の役に立つために唐手を修養する」の姿勢です。

 
我が会館(ゆめかなかん)も、元々は5年前の東日本大震災を契機に、茅ヶ崎北部の小高い丘に「道場+避難所」の二つの機能を備えた設備としてオープンしました。寝具、食料、水、薬品なども配備、備蓄を、これからも怠らずに行ってゆきたいと考えています。(ちなみに、ガスはプロパン、隣接地に茅ヶ崎市の防災備蓄庫や藤沢市の貯水槽がありますので、避難所としてはまずまずの立地環境。想定では1F、2F合わせて最大30名程度は寝起きが可能です) 
繰り返しになりますが、まずは天災を恐れず侮らず、しっかりと向き合いたいものです。

底冷えと余震に震えた避難所(実家近隣の小学校体育館)での車中泊(4/18撮影)


 

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