第299回湘南コラム「道場稽古再開に当たって」
「道場稽古再開に当たって」 館長 藤本恵祐
「新型コロナウィルス」の感染拡大になかなか歯止めがかからない状況ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
さて、政府・県の緊急事態宣言解除を受け、7月から湘南修武館の全道場で稽古が再開されました。稽古前の体調チェック、検温、対面稽古の中止、稽古時間の短縮など、様々な感染予防策を講じつつの再開ですので、今までと同様の稽古に戻るには、まだもう少し時間がかかりそうです。
今回の「新型コロナウィルス」の猛威によって、世界中の人々が新たな生活様式を求められ、企業活動や学校のあり方も大きく変わりつつあり、武術やスポーツの世界でも様々な影響が生じているのも事実です。
ここで少しだけ歴史を振り返ってみたいと思います。
今から約100年前の1918~1920年(大正7~9年)に、全世界で約6億人の感染者と数千万人の死者を出したとされる「スペイン風邪」が日本でも猛威を振るい、約38万人の方が亡くなりました。⇒ http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/
当時国内では、柔術や唐手術も既に普及を始めており、相応の犠牲者を出しながらも、様々な工夫や対策を講じて何とか乗り切り、今日の柔道、空手に進化・発展してきたはずです。
今こそこの歴的な事実を、私たちは冷静に受け止め、落ち着いて事態に対処する必要があると考えます。
「もう今までの生活様式には戻れない」というフレーズを最近よく耳にしますが、「大胆に変えるべきもの」と、「変えてはならないもの」の両者が存在し、そこの判断を間違えてしまうと、物事の本当の価値を損ねてしまうことになりかねません。
私は武術については後者に該当すると信じており、当面は様々な対策を講じつつも、対人鍛錬としての本質を見失うことなく、将来を見据えてしっかり向き合って行きたいと思います。